西日本豪雨から1年経過した岡山市東区砂川(平島)の堤防

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西日本豪雨による岡山市の被害状況

昨年の西日本豪雨は岡山市にも大きな被害をもたらした

岡山市では7月3日から6日まで雨が全く止むことなく降り続けた

当然河川が増水して岡山市の大半が水浸しになってしまったのである

それでも倉敷市真備町ほど大きな被害がなかったことからあまり岡山市の被害は触れられてない

倉敷市は死者52名で住宅全壊は4646件に対し岡山市は死者2名で住宅全壊は13件である

数字だけ見てしまうと岡山市の被害に関しては倉敷市よりかなり小さかった印象を受ける

しかし岡山市も住宅半壊は1195件(倉敷市は846件)で床上浸水は1041件(倉敷市は116件)ある

さらに床下浸水になると岡山市は3982件もあったのだ

その岡山市で最も被害が大きかったのが東区の平島地区である

旭川水系の砂川の堤防が決壊したことで平島地区や沼地区が広範囲に浸水した

その被害範囲は約750ヘクタールで浸水は最大1.5mに達し住宅2,230棟が浸水被害を受けたのである

完全に「水害」状態だった

幸いなことに犠牲者はこの平島地区からは出なかった

岡山市から出た2名の犠牲者は北区と南区の男性だった

だが被害範囲の大きさで言えば平島地区が最大だったと言える

被害状況の画像等は以下↓ページで見れる(1ページと4ページに砂川堤防決壊時の画像がある)

http://www.city.okayama.jp/contents/000356483.pdf

その被害の生々しさがわかるだろう

砂川堤防決壊の原因

なぜ砂川の堤防は決壊したのか?

決壊前の砂川の堤防は盛土の上にアスファルト舗装してあるタイプの堤防だった

そして川に対して高さも最底部から7メートル程度しかなかった

そして決壊箇所は川幅も20メートルに満たない程度のものでかなり狭い箇所だった

数日振り続けた大雨による砂川の増水は堤防の高さも幅も全て上回り既に溢れ出していた

そして決壊箇所は川自体がカーブする位置にあることからより水圧が強くなる箇所でもあった

その上で土の堤防には以下の決壊要因が生じていた

・増水による水圧

・増水による浸透

・流水による洗掘

高さもなく幅も狭くカーブする位置である上にこの3つの要因が加わり「土の堤防」は決壊した

まるで虫食い歯のようにボコッと120mにも渡って「水路」が発生してしまった

その結果その先にある平島地域がモロに浸水してしまったわけである

国道250号線も長期不通になった

近くのローソンは完全水没し店内は水浸しで営業再開まで半年ほど要していた

そのローソンからさらに500m先にあるゆめタウン平島も浸水し1週間ほど営業できなかった

営業再開後も物流が回復してない事から商品棚がガラガラな状態が長かった

他にも多くの住宅や店舗が浸水して被害を受けたのである

物流が途絶えてスーパーの棚がガラガラな様はまるで震災直後の首都圏のスーパー並だった

そして多くの水田や畑も水浸しになった

特に野菜を栽培していた畑の被害は甚大である

泥水に浸かって水浸しになってしまった野菜はもう食べることができない

せっかく育ちつつあった野菜も泣く泣く破棄することになってしまった

そういった被害に関しては表に出てこないからあまり知られない部分だ

西日本豪雨は農業分野にも深刻な被害をもたらしたのである

決壊した砂川堤防の現在

決壊した砂川の堤防はその夏からすぐに工事が着手された

決壊箇所に土嚢を積み上げるところから着手しその上に盛土で形を作る

そして今度は川側の法面(斜面)をコンクリートで補強された

増水時の水圧に耐え浸透を防ぐためである

現在の砂川堤防の画像である↓

別角度からのもの(堤防の彼方に浸水被害があったゆめタウン平島が見える)↓


河川がカーブしている個所↓

依然として高さは川の最底部から7メートル程度しかない

決壊した箇所だけ高くするわけにもいかないからこれは無理もない

当然川幅も同じままで増水時はこの程度の川幅はすぐに水で満たされてしまう

だが法面(斜面)をコンクリートで補強した事で増水に対する耐久力は増しただろう

この工事は思ったより長期間に渡りまだ完全に終わってなく8月で終了とのことである

復旧工事に1年以上要することになる

当初は次の大雨や台風に備えた応急処置的な工事だった

そして大雨の心配がない冬場になって新たにやり直したようにも思えたが実際はどうだったのか

どちらにしても工事期間はかなりの長期間だった

このコンクリートによる法面補強は決壊箇所から北上すると既に施されている箇所が多い↓

一番下の画像は補強個所と補強されていない土の堤防の境界を撮影したものだ

土の部分が剥き出しになっている箇所もありいかにも脆そうであるが西日本豪雨では無事だった

これら既存の補強済箇所は全て住宅が多い平島地区側のものである

住宅が多ければ浸水被害も甚大になるわけでその箇所を優先的に補強したことがわかる

しかし昨年の西日本豪雨で決壊してしまった箇所はコンクリート補強が未対応の箇所だった

土だけの堤防では水の浸透が進めばどんどん脆くなるわけで決壊は時間の問題であったわけだ

外来牧草型堤防のリスク

土の堤防は工事費用も安く済むし自然環境への影響も少なく基礎地盤と一体になりやすい

維持管理にも負担が少なくとても便利な側面もある

決壊前の砂川堤防は↓のように法面 (斜面) に様々な植物(樹木)が生い茂り原始的な雰囲気だ

堤防植生の「外来牧草タイプ」と呼ばれる堤防であり自然環境的には理想の姿かもしれない

だが外来牧草型堤防は草丈が高く堤防の管理が難しい

砂川堤防は「古来から続く自然の姿のまま」と言って良いほど放置されていたようなもんだった

生い茂っているのも寧ろ草というより樹木といった部類のものだ

現地はご覧のような湿地帯であり堤防の反対側は水田や用水路が広がるわけでマムシの生息地だ

実際この日だけでもマムシに3匹も遭遇した

そのうち1匹はなぜかいきなり鎌首もたげて「シャー」と口を開いて威嚇している状態だった

そんな状況のために現地にはこんな注意喚起がされているほど↓

マムシの毒性はハブの2~3倍ほどあり国内では年間10名ほどが噛まれて命を落とすほど危険なもの

しかもそれは被害が知らされた数であり実際の犠牲者はもっと多いという

スズメバチによる犠牲者が年間20~30名だが実際はそれよりも多いかもしれないのだ

マムシはそれほど危険なものでありそれも管理の難しさの一因でもあるだろう

現にこの日1,2時間程度で3匹も遭遇するほどだったから

さらに外来牧草型堤防は基本的に平均根毛量が少ないから耐浸食性が低い

高密度であるがゆえに平均根毛量も多い「シバタイプ」の堤防法面に比べて増水には脆い

この砂川堤防の場合は植生環境的にも最も侵食性が弱かったと言える

繁殖している植物の平均根毛量が「スカスカ」だということだ

その上無造作に生い茂っていてとてもじゃないけど管理や強度検査などできる環境でもなかった

「自然のまま」にまかせすぎてしまった結果だろう

「これまで大きな災害がなかったんだから」という油断もあったのかもしれない

しかし地球温暖化はこれまでになかったものであり「過去の安全」はもうアテにならないのである

全国各地の「今そこにある危機」

地球温暖化が進み今後も同様の大雨が降る可能性は低くない

十分な高さや川幅があれば土の堤防でも良いだろう

実際岡山市内を流れる吉井川や旭川や百閒川などの一級河川は川幅も広く堤防の高さも15mはある

だから西日本豪雨でも決壊はしなかったし大きな浸水もなかった

だがこの砂川のような状況下にある堤防は注意が必要である

寧ろ中途半端な大きさの河川はほとんどがこのような堤防ではないだろうか?

この機会に全国の堤防で決壊前の砂川と同じような状況にある箇所は「補強」を急いだほうが良い

“幅も高さもなく・・・ましてカーブする位置にある土の斜面で形成された堤防”

河川の多い日本で同様の危険個所は決して少なくはない

まさにそれは「今そこにある危機」である

堤防法面(斜面)が土や芝でなくコンクリートになれば景観的に殺風景にはなってしまう

だがそれほど大きな河川でなければそこまで景観にこだわる必要もないかもしれない

夕焼けの中で河川敷に腰を落として川に石を投げるシーンなどは青春ドラマの定番だろう

今はもう「昭和の青春ドラマ」の定番と言うべきか・・・

それはともかくそんな河川敷は決まって綺麗に刈り揃えられた芝の堤防である

上述した堤防植生の「シバタイプ」と呼ばれる堤防である

コンクリート補強なしでも安全なのはその手の河川は川幅が広いからである

この砂川のような規模の川では景観どうこう言ってられないのが実情だ

実際砂川も“コンクリートチョコレート”で補強されてない箇所はまだある

だがこれ以上の補強が必要かどうかは難しい判断だろう

予算や時間の問題もあるし砂川の堤防を全てに同様の補強工事を実施するのは不可能なのもわかる

この補強だけでも10か月以上も要したわけだから

できることとできないことがあるだろうが少しでも「今そこにある危機」は排除できたら良い

特に危険が想定される箇所だけでもね

自然ももちろん大事だが「Let It Be」にも限度というものがある

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