ついにアメリカでも米カリフォルニア州ストックトンのマイケル・タブス市長によってベーシックインカムの導入実験が始まったり、イタリアではベーシックインカムに加えて年休支給開始年齢を引き下げる動きまで出てバラマキ色の政策まで実施されている
ベーシックインカムに関しては世界的関心事であり、アメリカではフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)や、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEOなど有力者が前向きな発言をしている
既に各国でベーシックインカムの実験は実行されていて、フィンランドでは生活の質が向上した結果が見られたり、ナミビアでは貧困率の低下による犯罪率の低下が見られたり、カナダでは子供の死亡率や家庭内暴力の低下が見られたり良い結果が多いが、各国とも本格導入には今のところ繋がっていなく、後述する他の国が本格導入予定である
そして日本も今後間違いなく貧富の格差は広がる上に、AIが進化し仕事を奪われる国民も多数出てくると想定されるから、「だったら日本でも・・・」と考えたくなるのも無理はないし、実際に2017年衆院選で希望の党が公約にこのベーシックインカムの導入を宣言する事例もあった
日本でベーシックインカム(BI)を導入する為に必要な財源・条件は?
日本でベーシックインカムを実現するためには財源が圧倒的に足りないのが問題である
仮に「生活できる水準の金額」を全国民に支給するにはそれこそ巨額の財源が必要だ
18歳以上の国民全員に月10万円(17才以下は半額)を給付するケースでも・・・
試算ではなんと約130兆円もの超巨額財源が必要になる
その為には消費税を49%まで上げなければならない
そもそも現行の消費税8%でも月10万では生活できない人の方が多いだろう
4人家族で家族全員18歳以上ならそれだけで月40万の収入とはなるが
単身者世帯だとよほど家賃や物価の安い地方に住んでいないと厳しい
それなのに消費税が49%まで跳ね上がってしまえば支出も跳ね上がることになる
もう月10万もらえてもほとんどの人間は生活が不可能だろう
この試算だけでもこの国でベーシックインカムを導入することの難しさが露わになる
それでもどうしても実行するなら、消費税だけ負担を重くするのは上述したように非現実的だから、他の各種税率を上げるか、あるいは現行の社会保険の何かを廃止することになるだろう
実現するには社会保障制度は撤廃しなければ不可能だろう
健康保険も年金も当然撤廃はもちろん各種控除も全て撤廃だ
特に年金はこれまで払い続けてきた国民にとっては完全に「掛け捨て」になる
その反発をどうするかという問題も出てくる
それだけしたってまだ財源が足りない
さらに消費税やその他税率のUPもやはり必要になる
ただでさえ控除がなくなって税負担が大きくなる上に各種税率までUPすることになる
健康保険も撤廃だから医療費も全て自費になりさらに支出が増える
富裕層は支給対象外にするとか、よく話題になる公務員人件費〇割削減とか、肥大化する一方のNHKに今後は法人税を課すとか、議員定数・報酬の削減とか・・・“お上”やその周辺の人たちに嫌われる施策まで求められるようになるだろう
月10万支給するのがそれだけ大変であり、仮に実現できたって税金の支払いが跳ね上がることでどっちみち国民は火の車だ
ならば給付額を下げるしかないわけだがそうなればますます「それだけで生活」は不可能になる
しかも月7万まで支給額を下げたって財源は約100兆円は必要になる
支給対象を20歳以上に限定したって財源は約88兆円必要だ
どちらにしても国家予算の歳出総額に匹敵するほどの超巨額財源が必要になる
石油や天然ガスや鉱物等“不労収入”による巨額の富を生んでくれる天然資源が豊富な国ならまだ可能性はある
しかしそれら天然資源に乏しい我が国にはそんな「金の生る木」などないし、財源は国民の「労働」からしか捻出されない
「労働」を不要とするレベルのベーシックインカムが導入され、さらにそれを維持するためには、今の何倍もの「労働量=税収」が必要になるという矛盾が我が国にはある
その上我が国は少子高齢化が世界最悪レベルで進んでいて、肝心の「労働力」が今後は一気に低下していくことが確実である
「働かなくても良い楽園」の実現が日本ではこれほどまでに困難なことなのだ
スモールベーシックインカムなら実現性はあるか?
「ベーシックインカム」というと「働かなくても生活できる制度」という印象も強いが、既に実験をした各国の支給額がそれだけで生活できる水準の金額であったことはほとんどなかった
つまり、「現状の収入にプラスして数万円」という意味合いの支給だった
どの国だってそんなに潤沢な財源などあるわけがないから当然でもある
無い袖は振れないのだ
その結果としてどの国でもストレスの軽減や心の余裕が生まれたことで生活の質の向上が認められたわけで有意な結果が出ている
しかしそれでも各国とも本格導入には繋がっていないところにこの問題の難しさがあるわけだが・・・
とはいえ日本でも支給額を小さくする「スモールベーシックインカム」なら現実味が出てくる
ホリエモンなどは月最大5万を提案していたが、5万でもまだ財源は厳しいだろう
現実的なラインとしては月3万円だろうか
さらに支給対象を成人以上とか一定の年収以下に絞ればより現実味は増す
生活保護のように他に労働収入があれば打ち切られることもない
弱者救済としては良い施策だろうし、中間層にとっても生活の余裕が若干生まれる
とはいえ「焼け石に水」感もあり無駄なバラマキに終わるリスクも高い
AI(人工知能)がベーシックインカムを実現させる可能性は?
今後10~20年間で49%もの仕事が人間からAIに奪われると予測されている
さすがにそこまで急には変わらないとも思うがAIの時代はもうすぐそこまできている
そうなればその生産性は人間をはるかに凌駕するものだ
当然これまで以上の富を生んでくれる可能性は高い
多くの人間は職を失うが経営側とすれば人件費が浮くわけで利益はさらに大きくなる
その利益を内部留保で溜め込まないで(そもそもこれが現在の不況の原因の1つでもある)、ベーシックインカムの財源として活用する仕組みが検討されているわけである
当然「なんで弱者救済のために稼いだ金を使わなきゃなんねーんだよ!」と反発する経営者が続出するだろうが、人類史上初の社会構造の変化でありそこは法人税の大幅UP等で応じてもらうしかないだろう
さらにAIの普及で公務員も多くは職を失うわけでそちらの人件費も浮くからそれはモロに国の歳出削減に繋がる
AIによって人間は多くの仕事を奪われるが、その分人件費も大きく浮くことになる
その浮いた分をうまく仕組化してベーシックインカムとして分配すれば、支給される側も本当に自分のやりたいこと・やりたい仕事に専念出来て充実した人生が過ごせるようになるわけだ
ファンタジー全開な予測ではあるが、ベーシックインカムを推奨している人物の理想論の大半はそこにある
そして現実的にはAIの進化以外では生活できるレベルの金額を支給するベーシックインカムの実現は現状では不可能に近いともいえるだろう
世界中で進行するベーシックインカム(BI)の導入国について
ベーシックインカムの歴史は実は古く、世界で最初この概念を提唱したのは16世紀イギリスの思想家トマス・モアで、彼はその著作「ユートピア」の中で「盗賊を減らす方法」として無条件で全ての人民に支給するベーシックインカムの理念を唱えた
「金は最高の精神安定剤」という考え方は確かにある
犯罪に走る原因は必ずしも金が原因ではないが、それでも多くの犯罪はなくなるだろう
そして精神的余裕が得られることが特に大きい
今ネット上であらゆる「炎上」に加担している人たちや、匿名掲示板等で嫌いな人物の悪口を書き込んでいる人たち(アンチ活動含む)・・・さらには世の中のニュースに過剰な怒りをぶつけている人たちに無条件でポンと5億円でも渡したら彼らのほとんどはネットに怒りや悪口を書き込むことをやめるだろう
もちろんそれらすべての人が金がないからネット上に暴論を書き込んでるわけではない
愛情に飢えている・・・満たされない思いのやり場がなくてネットで「憂さ晴らし」しているケースも多い
不平不満、嫉妬、コンプレックス、ルサンチマン・・・あらゆる負の感情を吐き出すことで心の平穏を保っている
5億円は無理でもせめて働かなくて生活できるだけのベーシックインカム支給が実現すれば、トマス・モアも理想とした「ユートピア」に少しは近づけるのかもしれない
日頃のストレスがなくなり心穏やかに暮らせるようになれば、人々の心から怒りや嫉妬やルサンチマンのような負の感情もだいぶ消え失せるだろう
フランスやインドでは2020年からの法制化を目指している
これはおそらく各国で試された「試験的導入」ではなく正式な制度化になるだろう
世界で初めてベーシックインカムを導入するのはこの2国のどちらかなるのでは?
積極的に試験をしていたフィンランドやオランダやカナダもこれに続くかもしれない
アメリカもかなり限定的範囲ではあるが試験は始まっている
一方でスイスのように国民投票で否決された国もある
日本もおそらく国民投票があればかなり競るだろうが否決になるだろう
元々日本人は「変化」というものを嫌う傾向がある
まして財源も天然資源も乏しく少子高齢化が世界最悪レベルで進展している状況だ
実現するには大幅な税負担増か社会福祉の破棄が避けられないものを希望するかと
まして我が国にはベーシックインカムが実現したら困る立場の人間もたくさんいる
日本でベーシックインカムが実現するのはだいぶ先・・・それこそアメリカよりさらに後になるだろう
ベーシックインカムは2030年代までに世界で一気に広がると予想されている
実際もうそのような流れになりつつある
特にここ数年で一気にその動きが加速した感がある
2010年過ぎくらいから各国で議論され始めてはいたがまだ「夢物語」レベルだった
それが2015年あたりから急に話が進み始めた
何がきっかけで状況が変わるかわからないもんだ
とりあえずはまず、来年からスタートすると思われるフランスとインドをの様子を見ることになるだろう
フランスといえば日本より圧倒的に少ない労働時間で残業もない労働環境だ
1日3時間しか働かないなんてザラのようで休憩時間も食事時間もすごく長い
しかも労働中のも関わらず食事にはワインを飲めるお国柄だ
日本では深刻な少子化問題も改善して一時期出生率は2.00を超えるほどでもあった
もうその時点で日本から見れば「ユートピア」な国とも言える
しかしそんなおフランスも近年はまた出生率の低下や自殺率の上昇に貧困問題が浮上
若き大統領マクロンも低い支持率で苦しい立場に陥っている
ベーシックインカム導入によってこのフランスがどう変わるか非常に注目している